「出会い」に恵まれて今がある

『相棒』も、23年ぶりの舞台も、すべて「出会い」から始まっています。僕は、出会いにはすべて意味があると考えています。

この世界に入ったきっかけも、子どもの頃たまたまご近所に住んでいた方がつくってくれました。北海道芦別市で生まれ育ち、東京の立川市に引っ越してきたのが６歳のとき。米軍基地の近くの街で育ちましたが、小学校6年の頃から悪い仲間ができてねぇ。大きな声では言えませんが、なにせ12歳でタイマン（1対1の喧嘩）張ってたくらいでして。あのままいけば、不良になっていたかもしれません。母親には、ずいぶん心配をかけました。

その頃、米兵と結婚していた日本人の女性がすごくかわいがってくれて。家に遊びに行くと、アメリカのドラマを見せてもらえる。「どうしたらあっちの世界にいけるんだろう」と話していたら、その方が児童劇団のパンフレットをもってきてくれた。そこから、僕の人生は大きく変わることになります。

久しぶりに子どもの頃を思い出したのは、ロングインタビュー（『週刊新潮』2022年8月11・18日号に第1回目が掲載）がきっかけでした。インタビューをしてくださったのは、松田優作さんの最初の奥さんで今はノンフィクションライターをされている松田美智子さん。

優作ちゃんとは20歳の頃に『太陽にほえろ！』で共演したことをきっかけに仲良くなって。今思うと、どうしてあんなに気があったのか不思議だけど、親友になりました。優作ちゃんが美智子さん――当時は美智子さんが芝居をやっていた頃の芸名からマミさんと呼んでいましたが――と暮らしていた家にも、よく泊まりにいってました。だからマミさんとは、思い出をたくさん共有しているんです。

『水谷豊　自伝』（著：水谷豊、松田美智子／新潮社）
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そのマミさんによるロングインタビューが面白いと評判になったようで、じゃあ何回かインタビューをして1冊の本を作ろう、と。こうして生まれたのが『水谷豊　自伝』です。今まであまり過去を振り返ることはしなかったけれど、昨年古希を迎えたし、ちょうどいいタイミングかなと思ったんです。