素の自分に戻れば見えてくる

これまで医師としてたくさんの高齢者を診てきましたが、心地よいことや楽しいことを日々の生活のなかで実践している人は、元気で若々しい人が多いです。

つまり、他人と比較せず、自分が心地いいこと、楽しいことをすればするほど、老年期を幸せに過ごすことができるというわけです。

しかし、それでも、仕事一筋にやってきた人のなかには、仕事以外に好きなこと、楽しいと思えることをすぐに思い浮かべることができない人もいるかもしれません。

わたしはADHDや自閉症スペクトラム障害を抱えもって育ってきた人間です。

国には発達障害支援法という法律があり、発達障害の人の自立および社会参加のための生活全般にわたる支援体制ができていますが、もしかすると、支援が自分の意思とは別に働き、我慢を強いられて仕事をしている人がいるかもしれません。

わたしが強く思うのは、発達障害のあるなしにかかわらず、定年退職後にしがらみから解放されたら、無理せずにありのままの自分に戻っていいということです。素の自分と向き合えば好きなこと、楽しいと思えることがきっと見えてくるはずです。

がむしゃらに働いていたころと違って時間ができるので、好きなだけ食べ歩きをしよう、各駅停車でもいいから鉄道を使って全国の旅に出よう、少し奮発して小さなキャンピングカーを買って日本一周をしよう、若いころに買ったバイクをメンテナンスしてツーリングへ行こう、部活でやっていたサッカーをこの年からもう一度やってみよう……など、どんなことでも自分がやっていたことややりたかったことが出てくると、それが好きなこと、楽しいと思えることにつながっていくわけですよね。

※本稿は、『わたしの100歳地図』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。


わたしの100歳地図』(著:和田秀樹/主婦の友社)

30年以上の長きにわたり、高齢者医療に携わってきた医師でありベストセラー作家でもある和田秀樹が、初めて自身の人生を振り返り、そして、これからの人生を語る和田自身の人生100歳時代の設計図。ひとたび読めば、老後の不安がみるみるうちに消えていき、人生を幸せで豊かにしてくれるゴールデンシニア待望の福音の書である。