筆者の関容子さん(左)と

 

串田さんの『四谷怪談』にはまるでプールのような本水(ほんみず)の「隠亡堀(おんぼうぼり)」ができていたし、『夏祭』には本物の「泥場」が出現していた。

そしてその演出法。たとえば『盟三五大切』では、主人公の性格を説明するのに、「三五郎はイタリア人、源五兵衛はロシア人で演って」などと言うとか。

――そうなんだね(笑)。自由劇場の頃、吉田日出子さんに「ひしゃげた紙が風でフワッと飛んで来たように出てきて」なんて言うと、キラッと目を輝かして理解してくれたものだけど、勘三郎さんも彼女と同じように通じましたね。

最初、イタリア人的直情径行型の三五郎が彼で、ロシア人的に暗い源五兵衛を橋之助(現・芝翫)に配役したんだけど、その性格付けを聞いたら「両方演りたいから彼と日替わりにして」なんて言い出してね。

演劇はただ技術だけでやるとみんな同じになっちゃってつまらない。そこはイメージをふくらまして、まぁイタリア人、ロシア人って言ったっていろいろいるんだけど、でも、あぁ!、ってすぐつかめると思うよね。それにしても、それまで歌舞伎役者にそんなこと言う者はいなかったんじゃないかなぁ。(笑)