彼らに必要なのは、解決型ではなく寄り添い型の支援です。ゴールは就労ではなく生き延びること。「期限内での就労」という枠に当てはめたり、社会に適応させようとしたりしても、うまく合致しないのです。
これまでの支援体制は、本人や家族に寄り添い続けるように設計されていないことが多く、人材も育成されていません。結果として、負担はすべて家族に降りかかってくる。「育て方が悪い」「親が甘やかしたからだ」という自己責任論で覆われているのが、今の日本社会なのです。
それに加え、「家族が面倒を見るのは当たり前」という圧が、きょうだいをも苦しめている。私もよく親戚に「お兄ちゃんなんだから」と言われましたが、その一言で追いつめられ、矛先がひきこもる本人に向かってしまうことも多いと感じます。
自立できないきょうだいを、自分の生活を犠牲にしてまで扶養しなければならない、という法的な義務はありません。まずは自分の人生や家庭を守ることが第一。そのうえで余裕があれば、時々「どうしてる?」と声をかけたり、親を交えた家族会議をしたり、できる範囲でサポートする。それで十分です。
何より大切なのは、親が元気なうちに、家族以外の第三者とつながっておくことです。たとえばKHJ全国ひきこもり家族会連合会本部が主催する「兄弟姉妹の会」や、私が今年度立ち上げる予定の「兄弟姉妹オンライン支部」に参加して、同じような境遇の人に話を聞いてもらうのもいいと思います。「自分はひとりじゃない」と知るだけでも、心の支えになる。
それに、本音で愚痴を吐き出せる場所は大事です。「邪魔」「消えてほしい」といった言葉が出てくることもありますが、そう思ってしまう自分を責めたり抑圧したりしなくていい。
特有の境遇を「うちも同じ」「その気持ちわかる」と言い合えることで、行き場のない不安や不満がきょうだいに向かわずに済みます。まずは自分が幸せに生きること。そこで初めて、兄弟姉妹にも優しく接することができるのではないでしょうか。