最初から「全部のせ」の初代『FF』

一方、FFシリーズほど、この「抑制」という言葉が当てはまらない作品もありません。初代『FF』は、『ドラクエ2』と同じ年に発売されていますが、この段階でいきなり4人パーティー制であり、メンバーの名前も自分で付けられ、それぞれの職業選択も可能。そのうえ、上級職もあって、フィールドを移動する乗り物にもオーソドックスな船に加え、シリーズの象徴的存在となっていく飛空艇も登場します。

ドラクエがシリーズを重ねながら徐々に追加していったゲームの構成要素を、FFは1作目からいきなり「全部のせ」したわけです。このやり方はドラクエに対するカウンターとして非常に有効だったと思われ、当時のファミコンユーザーたちは「なんだこのハイスペックさは……」という驚きをもって初代『FF』を迎えました。

当時のファミコンユーザーたちは「なんだこのハイスペックさは……」という驚きをもって初代『FF』を迎えた(写真:婦人公論jp編集部)

つまり、これほど正反対なドラクエとFFどちらのアプローチも、それぞれにまったく正しかったのです。最初にフロンティアを開拓した『ドラクエ』と、『ドラクエ』という王者がいることを前提とした挑戦者『FF』では、とるべき戦略はまったく違ったということですね。

それが双方の会社としてのルーツや資質にぴったり合っていたからこそ、この2大J‐RPG*2シリーズが成立したのだといえます。