ファミコンを代表する2大RPG『ドラクエ』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズのゲーム内容はどう違っていた?(写真:婦人公論jp編集部)
『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』シリーズは「国民的ゲーム」として、日本のカルチャーに大きな影響を与えています。かつてはスクウェア・エニックスにも在籍し、現在はゲームデザイナー兼プロデューサーとして活躍中の渡辺範明さんは『ドラクエ』と『FF』の功績をあらゆる角度から検証しています。渡辺さんいわく「作品をまたいでスムーズにステップアップする道筋が、ドラゴンクエスト初期3部作のゲームシステム設計のみごとなところ」だそうで――。

あえてシンプルさを選択した初代『ドラクエ』

『ドラクエ』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズのゲーム内容はどう違うのでしょうか。ファミコン時代のドラクエとFFを「ゲームシステム」と「物語」の2つの要素に分けて比較していきます。

まずはゲームシステムについて、初代『ドラクエ』のゲームシステムで驚かされるのは、なんといってもそのシンプルさです。プレイヤーが操作するキャラクターは1人だけで、出現する敵も常に1体ずつ。戦士や魔法使いなどの職業もありません。

「最初の作品だからシンプルなのは当たり前では?」と思われるかもしれませんが、それはちょっと違います。

実は『ドラクエ』の発売時点で、『ウルティマ』や『ウィザードリィ』などの先行シリーズでは「複数の仲間VS複数のモンスター」の戦闘もわりと当たり前になっており、もっとずっと複雑なゲームシステムも実装されていました。

なにせ国産RPGにおける先行作品『ザ・ブラックオニキス』でも「複数の仲間VS複数のモンスター」の戦闘は実装されているので、時期的にはむしろそういった仕様を踏襲する方が、自然ですらあるのです。

しかしドラクエは「RPGという新しくて馴染みのない遊びを、子供たちにちゃんと分かってもらう」ということを何よりも重視していました。

そのため、初代『ドラクエ』ではあえて最低限のシンプルなシステムを採用し、いわば作品全体をRPG体験の「チュートリアル」にしたのです。「1対1の戦闘しかない」点は前述したとおりですが、呪文もわずか10種類、ボス戦は4回しかありません。

まさに極限のミニマムな作りになっています。当時のファミコン用ROMカートリッジの容量*1や性能面の制約があったのも事実でしょうが、このシンプルさこそが当時の子供たちにとっては「ちょうどいい」塩梅であり、ドラクエを「単純すぎてつまらない」と言う小学生はほとんどいなかったのです(パソコン出身のゲーマーたちにはいたでしょうが)。