イラスト:おおの麻里
ただの夏バテと思っていたけれど、涼しくなっても、ゆっくり休んでも、疲れが抜けない……。それは、疲労解消に必要なホルモンを使い果たしてしまっている可能性があります。(取材・文=大田由紀江 構成=渡部真里代 イラスト=おおの麻里)

抗ストレスホルモンが脳と体をダメージから守る

暑さが続くと悩まされる、疲労感や倦怠感。汗で水分やミネラル(塩分)が失われたり、室内外の温度差で自律神経が乱れたりすることが原因と言われます。

「そんな夏疲れの回復に働くのが、副腎から分泌される抗ストレスホルモンのコルチゾールです」と語るのは、すぎおかクリニック院長の杉岡充爾先生。副腎は左右の腎臓の上にひとつずつのった一対の小さな臓器で、多様なホルモンを産生、貯蔵しています。

「なかでもコルチゾールは、心身の疲労=ストレスにマルチに対応する優れもの。たとえば、血行を促して酸素や栄養を体の隅々まで届けたり、細胞に溜まった活性酸素など毒素の除去を助けたり、エネルギー源となる血液中の糖の量を調節したり。脳と体の両方を元気づける、一種の“カンフル剤”と言ってよいでしょう」(杉岡先生。以下同)

しかし疲労が積み重なると、その対処に多くのコルチゾールが必要となり、休みなく大量分泌を迫られるため副腎自体がやがて疲弊。すると、副腎の機能が低下するとともに、コルチゾールも枯渇してしまいます。

「この状態を医学的には『副腎疲労』と呼びます。まだ一般に知られていないので、一過性の夏バテや疲労だと考え、気づかずにいる方は少なくありません。生活リズムを整えても深い疲労感が続く、抑うつ気分に襲われやる気が出ないなどの症状があれば要注意。コルチゾールには血管や心臓を守る働きもあるので、不足すると、まれに心筋梗塞や脳卒中の引き金になることもあります」

 

あなたの副腎疲労度がわかるチェックリスト

□ 塩からいものをやたらと食べたくなる
□ 朝、なかなか起きられない
□ 夕食後から深夜にかけて元気になる
□ コーヒーやエナジードリンク、チョコレートが手放せない
□ すぐ甘いお菓子やジュースに手が出る
□ 肌荒れが気になる
□ 下痢や便秘が続く
□ 集中力がなく、気分が落ち込みがち

2つ以上当てはまれば、あなたの副腎はだいぶ疲れ気味。
まずは、副腎を疲労させるストレス要因の解消を目指しましょう