樋口「歴史的に見ても私たち世代は食いものに卑しいの」

上野 わたしは今72歳ですけど、空腹感で起きたことなんて、もう何年もないですよ。

『最期はひとり 80歳からの人生のやめどき』(著:上野千鶴子・樋口恵子/マガジンハウス)

樋口 それは残念。上野さんと私のそのあたりの違いは、集団疎開体験とか戦中・戦後の飢えの体験とかの有無によるものでしょうね。歴史的に見ても私たち世代は食いものに卑しいの。よくいえば、食生活に貪欲な精神が世代的体験としてあるわけです。

だから、世の中は食うことを中心にぐるぐる回っているという意識がいまだにありますよ。この間なんか、ある新聞記事に「高齢者こそ食べ盛り」という言葉を見つけて、すっかりうれしくなっちゃって、切り抜いて壁に貼ってあるもの(笑)。

上野 確かに、高齢者の施設で入居者さんと一緒に食事をすると、こんなに食べるの? というくらい、皆さんよく食べて、しかも完食なさいますね。