薬を服用しながら2週間おきの通院

彼に言わせると、ダメ出しするのは「お前が家事が得意ではないと言っていたから、俺が教えてやっている」ということだった。

夫は、会社の友人から、「お前は奥さんはいらないんじゃないか」と言われていたらしい。週に一度は、寮の部屋の畳の拭き掃除もしていたとか。小料理屋に食事に行けば、料理に鱧の卵が使われていることをヒントもなしに当ててみせたりもした。

家事のできない男性を夫にするよりは、はるかに心強く、感謝しなければいけなかったのかもしれない。でも彼はこうしたNGを私に出したあと、必ずこう言うのだった。

「俺はなんて不幸な男なんだ。俺はいつか結婚し直すんだ」

私の抑うつ症状はどんどん悪化していく。5ヵ月後には、彼に付き添われて心療内科を受診。「軽いうつ病」と診断され薬を服用しながら2週間おきの通院が始まった。すると薬の効果が出たのか、少しずつ症状は改善。それにともなって彼の厳しいチェックも減った。やっと普通の生活が送れるようになったと安堵したものだ。

しかし、3、4ヵ月たった頃、夫のダメ出しが再開。どうやら病状が落ち着いた私を見て、また注文をつけても大丈夫だろうと思ったらしい。精神的にきつい生活が復活した。

さらにきつかったのは、今回はダメ出しと同時に「馬鹿」とか「愚か者」などの言葉を投げつけられたことだ。それで心が傷ついても、私はなにも言い返せなかった。いや、言い返さなかった。

後編につづく


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