「裏スペック」の存在

魔王「ですから、そんなことどの会社も言いません。表向きは。それともう一つ。私たちキャリアアドバイザーは転職される方の味方とは限りません。キャリアアドバイザーの給料はどこから賄われているかご存じですか?求人企業から支払われる紹介料です。つまり企業の顔色を見て求人を紹介する可能性もあります。例えばこの求職者の希望とは合わないけど、企業が欲しがっているからねじこんでしまえとか」

いや、ほんとうそうなんだよなぁ。転職エージェントはあくまで企業からの報酬で成り立っている。だから求職者に寄り添うというより、どんどんちょうどいいところに割り振って、内定率を上げていかないといけない。だから、じっくり向き合って欲しいという求職者のニーズとのギャップが生まれてしまう。

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2話では、「裏スペック」という言葉も出てくる。
「年齢や性別の制限といった法律で求人票には載せてはいけないとされる条件を、営業がヒアリングで入手している場合がある」のだと言う。だから、公では「未経験歓迎」と書いてあっても、実際の条件はよほど「優秀」か、「若い」などの制限があるのだ。

いつも思うのだが、現実を突きつけるのはいいけど、そういう転職は若いうちしかできないとか、未経験業種にキャリアチェンジするならよほど優秀かよほど若くないと無理とか、そんな現状にちょっとでも疑問を持たないのだろうか?そんな理不尽な現状をなぜ肯定するのか?(肯定したくなくてもそう言うしかないのかもしれないけど)なぜそんな変えないといけない現状を無批判にそのまま伝えてしまうのか?本当に不思議。

誰だって職業選択の自由があり、さらに言えば、仕事を通して自己実現を追求し、自分の能力が最大限活かされることを求める権利・キャリア権(諏訪康雄さんが提唱)もある。どう考えてもそういった基本的な権利が守られないような理不尽な現状を、ちょっとでも疑って、アドボカシー活動(社会課題に声を上げたり、現状を伝え、解決策を提案したりすること)をしてくれよ!と思ってしまう。たとえ、先ほど列挙された厳しい現状がまごうことなき事実だとしても、「だからお前は甘いんだ」「これが現実だ(ドヤ顔)」みたいに言って何になるというのだろう。