とりあえず3年は死語

しかし、さすがにこんな残酷なことを言いっぱなしのキャリアアドバイザーが主役ではドラマとして成り立たないし、私の時のように言いっぱなしでなにもサポートしてくれないキャリアアドバイザーだったら物語はそこで終わってしまう。というわけで、魔王様は最初こそ厳しい現実をガンガン羅列していくが、その後はちゃんと求職者を導いていくのだ。

自分を抑え込み、自分の意見が言えず、ひたすらパワハラに耐えてきた千晴は、自分に自信がなく、転職活動においても、どこでもいいから雇ってくれるところに就職したい、という姿勢になってしまっている。そんな千晴に、魔王様は自分の本音や意思と向き合うよう促すのだ。

魔王様は千晴にこんな言葉をかける。

「自己犠牲でしか自分の価値を見出せてないんじゃないですか。人が喜んでくれることや望むことをするのではなく、自分の本音や望みを知ることのほうがずっと大事です」

あくまで求職者が、自分が本当に行きたい会社、やりたい仕事に応募するよう、後押しする。これがキャリアアドバイザーの姿ではないか。

さらに2話では、『シェパードキャリア』で魔王様のもとで見習いとして働くことになった千晴のもとに、とにかく正社員で働きたいという派遣社員の宇佐美由夏(早見あかり)が訪れる。フリーランスとして働く彼氏から、「自分もフリーランスなので、非正規雇用の君との結婚は考えられない。妥協したくない(もっと安定した相手を探したい)」とフラれ、正社員になることで関係を修復しようとするのだ。

正社員経験がなく、現状の給与水準も低い由夏。彼女が現実的に内定が取れそうなのは、給与水準も今の派遣と同等の会社ばかり。仕事もサポート的なものが多い。それでも内定が出るならと面接を受け内定をもらうが、「正社員として働けることになった」と元彼に伝えても相手にされず、さらに二股をかけられていたことが発覚。そんな由夏に魔王様はこれでいいのか?と問う。ここまで来て由夏は、妥協や安定ではなく、自分が本当にやりたい仕事を、いまより高い給与水準の会社で、という本心に気づき、自分の条件では本来難しい企業を目指すことになる。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

3話では、大手食品会社に4年勤める笹川直哉(渡邊圭祐)が魔王様のもとを訪れる。直哉にミスを押し付け、適切な評価をしてくれない上司に嫌気がさすが、同じ部署の同期は既に全員転職した中で、直哉だけは踏ん張り続けていた。
「とりあえず3年は同じ会社で働き続けるべき」と言われる社会で、直哉は「自分は3年以上勤めてきた」という自負があり、「他の同期は逃げ出してしまった」と思っている。しかし、実際辞めた同期に再会してみると、みな合わないと判断した会社に早々に見切りを付け、転職や起業に成功し、自分の人生をしっかり歩み始めていた。

魔王様は直哉に言うのだ。

「あなたは退職した同期たちのことを逃げ出したとおっしゃっていましたが、実際みんな自分に合う仕事を模索して自分の居場所を見つけていたみたいですね。その間、あなたは何をしていたんですか。〈とりあえず3年〉はもはや死語です。その間に積み上げた実績や培った強みも何もなければ、時間を無駄にしたも同然です」

〈とりあえず3年〉は死語と言っても、現状3年は勤めなければ短期離職と見なされ、転職に不利になるのも事実だ。でも、違和感を抱きながら、我慢しながら働くのなら、無理して3年もそこにいる必要はあるのだろうか。