ヘレンの言葉でコンビ結成を決意

昭和41年2月、やすしさんがコンビを組まないかと声をかけてくれました。当時、僕は吉本新喜劇の新人で来る日も来る日も“通行人A”役。ちなみに“B”は坂田利夫でした。そんな日々の中で声をかけてもらったんですけど、ずっとお断りをしてたんです。

やすしさんはそれまで4回解散していて、周りから「お前、5人目の“犠牲者”になるぞ」とも言われてました。それくらい、やすしさんは激しい人でしたし、何より僕からしたらやすしさんの速いペースのしゃべりに対応できるとは思えなかったですし、いろいろな角度から考えて、二十数回は「組みません」という返事をさせてもらいました。

ただ、それでもやすしさんが組もうと言ってくれる。当時、新喜劇のマドンナ役で、周りには秘密で交際を始めていたヘレンに相談をしてみたんです。実際には「組まない」という答えを決めているものの、最後の踏ん切りをつける意味で。

そうしたら思わぬ答えが返ってきたんです。

「漫才は2人だけが15分間、ずっと主役なのよ。お芝居の主役の人でも、そこまでのことはありません。そして、もしやすしさんとのコンビがダメだったら、私もこの世界を辞めますし、2人で誰も知らない街に行ってゆっくり暮らしましょ」

その言葉を聞いた瞬間、なんでしょうね、込み上げてくるものがあって「よし、やろう!!」となったんです。

それと同時に絶対に漫才で世に出るんやという思いも湧き上がってきました。そこまで言ってくれたヘレンを絶対に幸せにせなアカンと。

実際には「組まない」という答えを決めていたが、ヘレンの言葉を聞いた瞬間「よし、やろう!!」となったと語る西川きよしさん。