リーチのキャプテン像

キャプテンに就いたばかりの彼は、こんな心境を語ってくれた。

「日本人は気を遣って、みんなの幸せというか、集団のハーモニーというか……チームの和を大切にする。ラグビーならミスをした選手に対して『ドンマイ』『気にするな』と声をかける。でも、それではミスはなくならない。ミスの原因を突き詰めなくなるからです」

『国境を越えたスクラム-ラグビー日本代表になった外国人選手たち』(著:山川徹/中央公論新社)

ニュージーランドのチームでは、ミスに対して絶対に「気にするな」と慰めない。ダメなプレーは「ダメだ」と互いに遠慮なく指摘し合う。

「ラグビーにも日本人らしさが出ている。悪い意味ではないのですが、日本人にならないように気をつけたいと思っています。ぼくはニュージーランド人だから日本人のマネをして日本人らしくなってはダメなんじゃないかと考えているんです。いい面は残して、ダメな面は改善していきたいな、と。実はこれはエディーさんにも言われていることでもあるんです」

リーチは「自分は、スピーチでチームを引っ張ったり、大声で叫んで仲間を鼓舞したりするタイプのキャプテンではない」とも付け加える。

試合にフル出場し続けること。そして気持ちの入ったプレーをすること。キャプテンになってからは、この二つを常に意識していると話した。

それは、彼のラグビー観から生まれたキャプテン像だった。

「ラグビーはメッセージのスポーツです。チームに、大きな相手にもひるまずにタックルに入っていく選手がいたとします。その気持ちがメッセージとなって、チームメイトに伝わっていく。キャプテンが、怖がらずにタックルに行く姿を見せ続ければ、『オレもやらなきゃ』と仲間も奮い立つし、信頼も勝ち取れる。逆に腰が引けて、相手に弾き飛ばされたら弱い気持ちが伝わってしまう。すべてのプレーがメッセージになる。それが、ラグビーです」