「5万円で生活しているなんて、よほどの倹約家だと思われるかもしれません。でも、実はその反対なんです。」(撮影:洞澤佐智子)
2023年上半期(1月~6月)に反響の大きかった記事ベスト10をお届けします。第3位は月5万円の年金でやりくりする人気ブロガーの紫苑さんの記事でした。(初公開日:2023年1月26日)紫苑さん、以前は流行の高級ブランド品を買うなど、〈物欲のかたまり〉だったと言います。限りあるもので生活を楽しむようになったきっかけを聞きました(構成=内山靖子 撮影=洞澤佐智子)

忙しさにかまけて先のことは考えず

2020年3月から月5万円の年金のみで暮らす生活を始め、日々あれこれ工夫する様子をブログにアップしています。ひっそり更新していた記事を新聞社の方に見つけていただいたのがきっかけで、思いがけず本も出版できました。

5万円で生活しているなんて、よほどの倹約家だと思われるかもしれません。でも、実はその反対なんです。この生活を始めるまで、私はお金の問題に正面から向き合うことを避けてきました。

40代の初めに離婚し、シングルマザーとして2人の子どもを育ててきたうえ、仕事はフリーランスのライターで収入は不安定。当時、お金への漠然とした不安を抱いていたことはたしかです。それでも、日々の忙しさにかまけて先のことは考えないようにしていました。

大好きな着物を山のように購入したり、やみくもに株に投資して何百万円もの損失を出し、息子と大ゲンカになってしまったり。仕事が軌道に乗っていた時は、家賃24万円の高層の公団住宅に住んで、周囲から呆れられたこともありました。

そんな生活に焦りを感じ始めたのは、50代後半の頃です。子どもたちが独立して家賃13万円の公団に引っ越したものの、固定費、生活費を合わせると毎月約30万円ものお金が消えていく。貯金はどんどん減り、年をとっていくのに、いつまでこの生活を続けられるのだろうか。そう考えたら、不安のあまり眠れなくなってしまって……。

そこで家を買えば家賃を払う必要がなくなると思い立ち、64歳のとき、近所で売りに出ていた築40年の小さな中古住宅を買ったのです。貯金はほぼゼロになりました。

まさかその数年後、コロナ禍になるとは思いもしなかった。外出はままならなくなり、細々と続けていた仕事もなくなって、収入は月5万円の年金のみに。ここで初めて、限られたお金で生活せざるをえない現実と向き合ったのです。

そのとき69歳。本当に遅すぎました。とはいえ、当時の私に残された道は、収入より支出を少なくすることだけ。そこから私の節約生活が始まったのです。