節約のおかげで以前の自分とは別人に
こうした生活を続けてこられたのは、お金の計算が大の苦手だったため、目の前の美味しいもの、面白いことだけに集中してきたからだと思います。築40年の家を買ったとき、ゆくゆくは修繕費が必要になるということすら考えなかったほどですから……(笑)。
でもそのおかげか一般的な節約術にとらわれず、自分に無理のない方法で月5万円生活を楽しめているのかもしれません。
お金に関することだけでなく、人生そのものも大きく変わったような気がします。まず何よりも、健康になりました。無頓着にお金を使っていた頃は、過敏性大腸炎に悩まされ、胃腸薬が手放せない毎日でした。それが、栄養価の高い旬の食材で手作りした料理を3食食べているうちにすっかり治ってしまって。今は丈夫そのものです。
そのうえ心も元気になりました。5万円で生活していけるとわかったおかげで、お金に対する漠然とした不安が消えたようです。リメイクやDIYなど毎日やりたいことが増えたので、お金に不自由しなかったときよりも前向きに過ごせているように感じます。
限られたお金でやりくりするようになってから、自分が本当に好きなことがはっきりしました。以前は見栄を張って高価なブランドもののバッグを買ったりしていましたが、今思えばなんて無駄な出費だったのだろう、と。
意外だったのは、等身大の自分でいると人も心を開いてくれるようになり、本音で話す機会が増えたこと。人づきあいが苦手だった以前の私とは、まるで別人です。
ありがたいことに、本を出版したことで少しだけ収入は増えています。でも、この生活をやめるつもりはありません。何より心身ともに健康な日々が心地よく、70代にして初めて地に足がついた暮らしができるようになった私を見て、子どもたちも安心しています。
考えなしにお金を使っていた頃はケンカばかり。それがこの生活を始めてからは、家族の関係もすっかりよくなったのです。
自分で経験して気がついたのは、節約とは1円でも安いお店を探すことでも、ティッシュや洗剤の使用量をケチることでもなく、限りあるお金をどう使うかを考え抜く知的な行為だということです。
その姿勢で取り組めば、少ないお金でも楽しく元気に暮らせることが実感できたので、これから先の人生にもまったく不安はありません。