「おばあちゃんの知恵」リバイバル

「ヨーグルトを塗るのもいいって言うよね」

「あのね、実ははちみつも……」

と、どんどん話に加わってくる人たちがいて、ついに英国のお母さんたちはキッチンにあるものでスキンケアを行う時代になったのかと思ったが、ふと思い出したのは祖母のことである。わたしは若くして子どもを生んだ両親のもとで育ち、しかもたいへん育てにくい反抗的な性格をしていたので、よくボロクソに𠮟られて祖母の家に逃亡した。だから、幼年期の半分は祖母の家で過ごしたようなものなのだが、その祖母がやっぱり顔にキュウリやレモンをのせたりしていたのだ。

絵=平松麻

そういえば祖母は、使ったお茶の葉を溜めておいて、それを家中に撒き散らしたりしていた。「ばあちゃん、なんでそげん散らかしようと?」とびっくりしていると、ちゃっちゃっとお茶の葉を箒ではき始めて、「こうするとお茶の葉に埃がくっついてきて、家の中がとてもきれいになるのよ」(いや、ほんとうにガサツなわたしの祖母らしからぬ、こういうハイソなしゃべり方をする人だった)と言っていた。「おばあちゃんの知恵」とはよく言ったものだが、記録的な物価高に苦しむ英国の庶民のあいだで、どうやらそういった感じのものがリバイバルしているのである。

たとえば、『ガーディアン』という新聞のサイトにも「ビューティー・ハック」という連載があり、それがこういう知恵の宝庫だ。薔薇の花びらにとうもろこしの粉を混ぜてチークパウダーを作るとか、ジャガイモをニキビに擦り付けると治るとかいうアイディアを取り上げ、記者が実際にそれをテストして可否の判断を下している。