イギリス在住のブレイディみかこさんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「転がる珠玉のように」。今回は「暮らしの知恵」。夏になると、英国ではあちらこちらでバーベキューパーティーが始まる。そうした集いに招かれ顔を出したところ、ある話で盛り上がったそうで――。(絵=平松麻)

バーベキュー・パーティー

夏になると、英国の住宅街に一斉に漂い始めるものがある。バーベキューの匂いだ。スーパーに行くと、バーベキュー用の肉やソーセージが特売品として一番目立つところに置かれ、ソーセージや串刺しの肉のパックをショッピングカートに入れた人々が、酒類売り場に直行して24本入りのビールの箱や箱入りワインを買っている。

わが家のある通りでも、あちらこちらでバーベキュー・パーティーが始まり、週末になるとどこかしらに招かれて行くことが増える。先週もそうした集いの一つに顔を出した。

昨今の英国の地べたの特徴として、人が集まると、自然と物価の話になる。「バーベキューの肉の値段も上がったよね」とか、「最近はスーパーで会計を済ますときに、以前の5割増しぐらいの金額になっていてビビる」とかいう話をしていたときに、あるご近所の女性が言った。

「こんなに食費がかかるようになると、スキンケア製品なんか買えなくなっちゃって……。顔にオリーブオイルを塗ってみたら、それが実は意外とよくて」

「へえー」

「わたしも高いパックなんて買えないから、キュウリを顔にのせてみた。むかし、母親がよくやってたから。そしたら、なぜかシミが薄くなったような気がする」

と言った女性もいた。