手作りはタイパがいいとも言えない

中には子どもの色鉛筆をリップペンシルの代わりに使うというすごいアイディアもあって、さすがにどうかと思うが、これはTikTokで拾った「知恵」だという。記者は律儀に色鉛筆の先を水で濡らし、唇の輪郭をとってみたらしいが、硬すぎて描けなかったという。さらに、フェイク・タン・ローション(日焼け肌に見せるローション)の代わりにインスタントコーヒーを使うというのもある。手持ちのボディローションにインスタントコーヒーを混ぜればいいという「知恵」だが、試してみた記者によれば、肌は確かに小麦色になったものの、雨が降ると全身からコーヒーが流れ出し、隣に座っていた人の衣服を汚すなどのデメリットがあったそうだ。美容液やクリームに使われて人気のカタツムリを庭で探して、カタツムリが這った後の粘液を綿棒で採取し、顔に塗って寝るというのもあった。苦労のわりにはあまり量が取れないので、翌朝、肌に変化を感じることはなかったという。

ほかにも、バナナの皮が目のクマに効くとか、シャンプーした後は髪をコカ・コーラですすぐといいとか、こうなってくるといよいよ「おばあちゃんの知恵」じみてくる。いまは本当に2023年なのかという気分になってくるが、「知恵」で苦しい時代を乗り切ろうとしている人が多いのだろう。

しかし一方では、これが本当に倹約になっているのかという疑問も残る。なぜなら、バナナもコカ・コーラも無料ではないし、食品価格が特に上昇しているいま、長期的に考えると安い化粧品より高価になる可能性もあるからだ。

それに、効く効かないは別にして、カタツムリを追いかけたり、化粧品を手作りしたりするには時間がかかり、タイパ的には効率がいいとも言えない。もちろん、そのために外出などにかけられる時間が減って、お金を使わなくなる利点はあるが。

いよいよ世知辛い時代になってきた。ひょっとすると、「暮らしの知恵」を試して楽しむ行為じたいが、お金のかからない娯楽の一つなのかもしれない。