仕事を通して地域をよくしようと努力なさっている起業家や、町工場、お店の経営者の方々。取材で出会った彼らが取り組んでいたのは、たとえば雑草を食料として利用できないかとか、近所の邪魔な竹藪の竹を、自転車のフレームの素材として再利用できないかといった、具体的な活動でした。地球規模の食料問題や環境問題を、手の届く範囲から解決すべく模索していたのです。
みんなそうやって地に足をつけてがんばっているのに、自分はなんて頭でっかちだったのだろうと反省しました。大きな組織の中にいて、大所高所から抽象的な言葉を口にし、自分はこれで本当にいいんだろうか?と。
「自立」という部分についても、自分にふがいなさを感じました。たとえば、帳簿をつけたり、取引先と交渉したりといった、町工場の皆さんが当たり前にしている作業も一切自分でやったことがない。それなのに、世の中に物申す資格が果たしてあるのかと考えたのです。
実は番組を担当しながら、管理職として、大阪局の組織運営の仕事にも少しだけ携わりました。しかし実際に始めてみると、自分に向いているとはどうしても思えなかった。
では、どんな仕事に魅力を感じるか。僕にとってそれは、やはりスタジオでマイクをつけて喋っている時なんですよね。それが一番自分らしい。何より楽しいと気づきました。
このままNHKにいれば、全体の組織運営にかかわっていくこともできますし、その後、たとえば関連会社で働くという選択もあったかもしれない。もちろんそれも魅力的な選択肢の一つです。
しかし、体力的にも消耗するアナウンサーという仕事は、活躍の場が常にあるという保証がない。だからこそ、現場でやりたいことができるうちに、次に行かなくてはいけないと思いました。