コロナ禍を経て、旅行の計画を立てている方、慌ただしい日常から離れてリフレッシュしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。そんななか、訪れた温泉は約500湯、女ひとりで温泉を巡りまくっているという永井千晴さん。旅行情報誌編集部で働いた経験を活かし、現在は「温泉オタク会社員」としてブログなどで温泉情報を発信しています。前回配信した温泉記事が大好評につき連載化。第1回目のテーマは「あの湯のためだけに行きたい『わざわざ湯』」です。
「あの湯のためだけに」わざわざ行きたい
新幹線駅・空港・都市から遠くアクセスにだいぶ難があるにもかかわらず、個性的ですばらしい湯が湧いているためにわざわざ訪れたくなるところがあります。
平たくいえば、辺鄙な場所に位置する小さな温泉地(または一軒だけポツンと建つ日帰り入浴施設)を、個人的に“わざわざ湯”と呼んでいます。
例えば、本州の北端、「あの世に最も近い場所」といわれる、青森県の恐山(おそれざん)。
日本三大霊山に数えられており、故人をしのぶ地として知られています。
境内には湯小屋(共同浴場)がいくつかあり、透き通った硫黄の香る温泉がひたひたに満ちています。
白い湯の花が湯船にまとわりついていて、さっぱり弾く新鮮な浴感がすばらしい。
参拝客がすぐ横を通るようなところにあり、湯浴みをするのは度胸がいりますが、神聖な湯場で身も心も洗うような体験ができるのは恐山ならでは。いつまでも忘れられない温泉です。
正直に書くと、恐山はどこから向かうにも大変で、気軽に行ってみたらといえる場所ではありません。
でも、「あの湯のためだけに」行く旅行も楽しいものです。
期待値はその分上がってしまうけれど、達成感で心がいっぱいになるのもあって、私はよく、わざわざ足を運んでしまいます。