素人が片手に眺めても楽しい
私は新幹線が開業して半世紀の節目に新潮社から『東海道新幹線開業50周年記念 世界最速「車窓案内」』という本を上梓したが、これを作っている最中にこの縦断面図が手元にあればずいぶん便利だったに違いない。
ちなみにこの本では東京から新大阪までのキロポストを0から515まですべて地形図上に掲載しており、現役のある運転士さんからは「重宝しています」とメッセージをいただいた。
資料がない中で正確を期すためにはグーグルのストリートビューを利用した。
おそらく1000ヵ所を超える新幹線の架道橋の画像をほぼ1キロおきに閲覧し、画像に写っている「**架道橋 **K**M」の数値を参考に地形図上に補正を加えて表示したので、かなり正確な位置が示されているはずだ。
私が思いついた原始的な方法であるが、ストリートビューは何かと役に立つ。
公開されていない縦断面図ではあるが、素人が片手に眺めてもこれほど楽しい「沿線案内」なのだから、特に経営の苦しい鉄道各社はこれを活用しない手はない。
もちろん秘密にすべき信号情報などは省略するとして、アップダウンやカーブ、トンネルや鉄橋の情報は線路上に標識も出ていることだし、一般向けに出版しても問題はないだろう。
きっとテツの諸氏には「必須アイテム」として上々の売上げを記録すると思うのだが。
※本稿は、『地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(著:今尾恵介/中央公論新社)
「東が上」の京都市街地図/鳥瞰図絵師・吉田初三郎/アイヌ語地名の宝庫/職人技のトーマス・クック時刻表/非常事態の地図……著者は小学校の先生が授業に持参してきてくれた国土地理院の一枚の地形図に魅せられて以降、半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた。その“お宝”から約100図版を厳選。ある時は超絶技巧に感嘆し、またある時はコレクターの熱意に共感する。身近な学校「地図帳」やグーグルマップを深読みするなど、「等高線が読めない」入門者も知って楽しい、めくるめく世界。