石川数正父子が築いた国宝松本城(写真提供:写真AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第34回では、打倒・秀吉(ムロツヨシさん)を誓ったはずの数正(松重豊さん)が豊臣方に出奔。敵に手の内を知られたも同然となった家康は追い詰められるが、そこに未曽有の大地震が発生したため、戦どころではなくなり――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第52回は「石川家のその後」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

「単純を以てよしとする」

ドラマでは、酒井忠次(大森南朋さん)が「自分(石川数正)がいなければ、戦をしたくてもできない。それがひいては徳川を守ることだと考えたのでは」と出奔の真意をくみ取るシーンが描かれました。

一方で前回もお話ししたとおり、ぼくの歴史解釈は「単純を以てよしとする」です。

石川数正が三河を出奔したとすれば、徳川家にいるよりも、羽柴陣営に属した方が生きやすい、と彼自身が考えたからだろう。そう考えるのが一番シンプルですよね。

なので、実際にはスパイをしようとか、家康に尽くすとか、そんな難しいことは考えてないと思います。

加えて言えば、人間の複雑な胸中を推測するのは、小説家の先生たちの仕事であって、歴史研究者が口を出すところではない気がします。