国連が設立した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年発表する「世界幸福度ランキング」。2023年、日本は総合点で世界47位と発表されました。先進国では下位の部類に入る日本。そのようななか「こんな閉塞した時代にこそ『わがまま』が大事になるのです」と話すのは、医師で作家の鎌田實先生。鎌田先生いわく「生きていくうえで一番大切なのは『自由』だというのが僕の信念」だそうで――。
自分で自分に「宣言」して、わがままを貫く
「医師にならなかったら何になっていたか?」と考えることがあります。
僕の家は貧しく、大学に進める状況にはありませんでした。父は病弱な母を抱え、苦労を覚悟しながら、実の親に捨てられた僕を養子にしてくれた人です。そんな父に勇気を出して「大学の医学部に進みたい」というと、「そんな余裕はない」と言う。
でも夢をあきらめきれず、執拗に食い下がりました。
「落ちたらどうするんだ?」と聞くので「落ちたら寿司屋になる」と答えました。本当は映画監督だったのですが。映画が大好きだったのです。どうせ苦労するなら好きなことをやりたい。この頃からすでに僕はわがまま人間でした。でも、さすがにそれを言い切る自信はありませんでした。
でも年に一度、父が連れて行ってくれるお寿司屋さんは、僕にとって別世界。大学に受かるのがベストですが、落ちて苦労するなら、寿司職人としてチャレンジしたい……もちろん、丁稚奉公は覚悟の上です。
「国立大学の医学部だけ受ける。他には行かない」と宣言しました。「不退転の決意」です。それが自分の「覚悟」を強めました。