「あこがれ」を持ち続ければ生きるのが楽になる

大学進学をめぐって格闘し、最後に父が泣きながら言ったのは、こんな言葉でした。

「自由をやる。その代わりすべて自分の責任で生きろ。お前の授業料も入学金も教科書代も出してあげられないと思う。すべて自分で考えろ。その代わり自由をやる」

結果的に、人生で一番大切なものをもらったと感じました。それ以来、生きていくうえで一番大切なのは「自由」だというのが僕の信念です。

実は、医学部進学は絶対の目標ではなく、「家の貧しさから逃れ、どこにでも自由に行ける人間になりたい」という本望を実現するための手段のようなものでした。その自由へのあこがれは、いまでも僕が生きる原点になっています。

一番大事なのは、自分の心の芯が何を望んでいるかを知ることです。僕は自由にどこへでも行ける人間になりたかった。それが目的でした。医学部に入ることが目的なのではありませんでした。

一番大事なのは、自分の心の芯が何を望んでいるかを知ることです(写真:本社写真部)

でもなかには、大学に入ること自体が目的になってしまう人、医者になるのが目的になってしまう人がいます。医者になって何をしたいのか、が大事なのです。

僕は自由という言葉にこだわりました。国立大学の医学部に受からなくても、僕はへこたれなかったと思います。寿司職人になって小さな店をチェーン化して、海外に店を広げていけば自然と世界へ開かれていくと考えたのです。

寿司屋にならなくても、自分がより自由になるために自分は何をすればいいかを考えたでしょう。