中村先生「いくら仲の良い家族であっても、差し迫ったタイミングでの話し合いは、冷静な判断ができないことがあります」(写真提供:Photo AC)
自分がどのような最期を迎えたいか、考えたことがあるでしょうか。相続やお墓のことを考える方は多いものの、最期の日までの過ごし方を考えている人は意外と少ないようです。幸せな最期を迎えるために必要なのは「きちんとした知識と自分たちによる選択」と語るのは、在宅医療専門医の中村明澄先生。中村先生「いくら仲の良い家族であっても、差し迫ったタイミングでの話し合いは、冷静な判断ができないことがあります」と言っていて――。

差し迫ってからでは、冷静な判断ができない

認知症の佐藤太郎さん(仮名・78歳)。一人暮らしを続けていましたが、症状が進行し、一人での生活が難しくなってきました。

太郎さんには、仲の良い2人の妹がいます。2人は、それぞれ太郎さん宅から電車で1〜2時間ほどかかる場所に住んでおり、それなりに距離があるものの、頻繁に太郎さん宅を交互に訪れては、兄の様子を見守っていました。

そのうち太郎さんは、認知症が進行し、近所を徘徊するようになりました。妹2人が頻繁に様子を見に訪れているとはいえ、それぞれ離れた場所で暮らしています。徘徊となると本人の危険度が増す上に、近所に迷惑がかかる可能性もあり、これ以上放っておくわけにいきません。

妹2人は、太郎さんに施設に入ることを勧めるも、太郎さんは「施設には行きたくない」の一点張りです。それならばと、妹2人のどちらかが太郎さんを引き取り、面倒を見るという流れになりました。