見事な最期

映司さんは「延命治療はしない」「最後まで妻と一緒に施設で過ごす」「がんの痛みは、施設でしっかりと緩和してほしい」「自分が亡くなった後、妻はこうしてくれ」と、自分の意思と計画をしっかりと息子さんと私たちに伝えていました。

本人の意思が伝わっていない場合、家族間で揉めたり、家族がなかなか決断できなかったりするものですが、映司さんの場合には自分の意思と計画がはっきりしていたため、残される息子さんも、迷う要素がなかったようです。

映司さんが最期を迎えるまでの物事の決断は、とてもスムーズに進みました。自分のことだけでなく、自分が亡き後の妻の身の振り方についてもしっかりと決断し、息子に託した上でこの世を去った映司さんの最期は、見事だったと思います。

映司さんは最後まで、妻のことを思いやっていて、「僕が死んでも、死んだとは言わずに“買い物に行っている”と伝えてくれ」と話していました。

※本稿は、『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社)の一部を再編集したものです。


在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(著:中村明澄/講談社)

もしあなたがあと余命数か月と言われたら。あなたは何をしたいですか? 残された人に何を伝えたいですか? どのような最期を迎えたいですか?

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