大切なことを急いで決めるリスク

仲が良かった3人の間に、急に暗雲が垂れ込めたのは、まさにこの時。どちらかが太郎さんを引き取るという決断には、介護の負担のみならず、お金の話もついてまわります。妹2人も高齢で、話し合いに決着がつかないうちに上の妹の具合が悪くなり、入院することになってしまいました。

こうした体調や状況の変化も加わり、3人の話し合いは揉めに揉め、ついに決着を迎えることなく、関係性が壊れてしまいました。太郎さんはその後、施設に入る以外の選択肢がなくなり、成年後見人を立て渋々施設に入居することになりました。

『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(著:中村明澄/講談社)

いくら仲の良い家族であっても、差し迫ったタイミングでの話し合いは、冷静な判断ができないことがあります。とくにお金が絡む時は要注意で関係性が壊れてしまうことがあります。

もう少し余裕のある段階で話し合いができていたら、また違った選択肢や考えが生まれていたかもしれませんが、大切なことを急いで決めるというのは、本人にとっても家族にとっても、良い方向に物事が進まないリスクがあります。