妻の今後まで考えて決断し、託して逝った夫

一方、自分の意思と、残される家族のことまで考えた無理のない計画をはっきりと周囲に伝えることで、家族も安心して最期を迎えられたケースもあります。

妻が脳梗塞を患い、意思疎通が図れなくなったことをきっかけに、数年前に夫婦で施設に入居した加藤映司さん(仮名・92歳)。自身も高齢で、一人で妻の介護をするのが難しいと判断し、夫婦一緒に施設に入ることを決めました。

映司さんが最期を迎えるまでの物事の決断は、とてもスムーズに進みました(写真提供:Photo AC)

ところがその後、映司さんが前立腺がん末期と発覚し、がん末期に対応できる施設ということで、緩和ケア専門施設「メディカルホームKuKuRu」に、夫婦一緒に移って来られました。

痛みや苦しさを和らげる緩和ケアを、病院とほぼ同じように最期までできる施設は限られています。

映司さんが、自身の終末期の過ごし方について考える段階に来た時、真っ先に考えたのが、残される妻の今後についてでした。映司さん夫婦には息子さん(71歳)がいますが、息子さんも高齢で、自分亡き後、妻の面倒を見るのは難しい状況です。

そこで映司さんは、「自分が先に死んでも、妻を安心して預けられる場所を探したい」と希望されていたようです。息子さんに「夫婦一緒に入ることができて、最後まで一緒に過ごせる施設を探してくれ」と頼んで見つけてもらったのが、がんの緩和ケアにも対応した施設である「KuKuRu」でした。