へそ天のメイ
詩人の伊藤比呂美さんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。夫が亡くなり、娘たちも独立、伊藤さんは20年暮らしたアメリカから日本に戻ってきました。熊本で、犬2匹(クレイマー、チトー)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。Webオリジナルでお送りする今回は「カ・マテ!」。夏場は、漫画『鋼の錬金術師』に出てくるキャラクターに似た髪型で過ごす伊藤さんですが、今年は少し違ったようで――。(文・写真=伊藤比呂美さん)

夏は暑かった。クレイマーが日中散歩に行きたがらなくなっちゃって、あたしはズンバばかりやってた。もちろんバレエも行ってるのだが、バレエは週一で、ズンバは毎日。

バレエは毎月引き落としだが、ズンバは500円をそのつど払う。今日行って帰り際に明日の予約をする――。このシステム、「これは、アレだな」(高橋源一郎さんの著書の真似をしました)、何かに似てるなと思ったのが、課金して次へ次へと読んでしまう漫画。あのシステムに似てるのだった。

ずるずる読む漫画には罪悪感があるが、こっちにあるのは達成感。汗はかくし、先生にびしばし鍛えられて、体の動きを直されるから、どんどん楽になっていってるのを実感するのである。その結果、先生の動きは軽やかで自在なズンバだが、あたし(修業中)がやってるのは筋トレみたいな重たいズンバ。

基本姿勢は、膝を曲げ、腰を落とし、腹筋を固めて体幹を保つ。つまり四股を踏むかバスケのディフェンス体勢である。それから、爪先と膝の向きを合わせる。身体の中心を意識する。重心を移動させてまた戻す。股関節をひらく――バレエの先生も、四股は踏まないが、同様のことを指示してくれている。