「美しい母」のフランスと「古い女」の日本

ところで、漢字だと「しゅうとめ」は女偏に古いと書いて「姑」になり、どこか意味深な感じを抱いてしまいます。それとは反対に、フランスは義理の母のことをベル・メール(belle-mere)、「美しい母」と言います。

現実に即しているかは別として、古い女とそのままズバリ表現されるより、美しい母と形容されるほうが嬉しいかもしれません。

『フランス・ブルターニュで見つけたお金をかけない豊かな暮らし』(著:シャルバーグ八千代/大和書房)

ベルは「美しい」という意味の形容詞の女性形ですが、フランス語で義理の関係にはいつもこの形容詞が付きます。

義父だったら男性形でボー・ペール(beau-pere)、義理の息子はボー・フィス(beau-fils)。義理の娘、つまり嫁もベル・フィー(belle-fille)となります。義理の両親は、複数形でボー・パラン(beaux-parents)です。

例えば、義母が私を誰かに紹介する時は「私の義理の娘マ・ベル・フィー(ma belle-fille)」と言います。そして「末の息子の奥さんなの」という感じで続けます。

日本語だと「うちの嫁」となるところ、フランス語には「嫁」という言い方がありません。あくまでも義理ですが、「娘」になります。

しかし、フランス人だってこの形容詞の接頭語を文字通り「美しい」と解釈するはずはなく、もちろん「義理」と同義です。

どうしてこういう表現になったのかわかりませんが、やっぱりこのオブラートに包んだ表現のほうが、ズバリその関係を表現しているような日本語の「姑」や「嫁」より、私は好きです。

そういえばフランス語には「嫁に行く」という言い方もありません。それは単に「結婚する」という表現になります。女偏に家と書く「嫁」は、日本の伝統的な結婚の意味を表しているようです。