施設入所時も自宅のものを持ち込むことで落ち着く

ヘルパーは、認知症の症状のある方がパニックに陥らず、自分らしく生活できるようにサポートするには、できるだけ早く、この「いつも通りの生活」のポイントをつかむように努めています。

実は、この「いつも通りの生活」こそ、長年一緒に暮らしてきたご家族だからわかる部分です。

ご家族はよく「お父さんはこれが好きだ」「お刺身で晩酌を楽しみにしていた」とお話ししてくださり、ヘルパーに様子を伝えてくれます。在宅での暮らしは、長年の生活の積み重ねででき上がっていると私は考えています。

 

生活の積み重ねを大切にするのは、在宅暮らしだけでなく、施設に入ったときでも同じです。

たとえば、自宅の部屋にあった品々を施設に持ち込むことで、安心される場合がよくあります。タンスなど大きなものでなくても、いつも目にする「絵画」ですとか、「のれん」ですとか、小さくても「いつも視覚に入っていたもの」こそ、気持ちを落ち着けることができるようです。

 

認知症の症状のある方に接する場合、こんなものもういらないとか、新聞はもう解約しよう、などと思う前に、ご本人の「いつも通りの生活」について考えてあげていただきたいと思います。