生活に新しいもの、便利と言われているものを取り入れたとき、逆に「覚えられない」「使えない」「できない」ことが表面化して、ご本人が自信を失うきっかけになりかねません。たった「電化製品の交換」が、です。
ポット以外にも電子レンジ、炊飯器や洗濯機などがあります。新しいものを購入する際に、ご家族から相談があった場合は、「できるだけ、これまでと同じものを購入してください」とお伝えしています。
現在の電化製品は様々に工夫が進み、機能も複雑化していますし、「同じもの」を探すのは逆に至難のわざかもしれません。けれども、なんとか少しでも近いものに替えていただければと思います。
実は君江さんの場合、ポットのスイッチの位置が違っただけで、「お湯が沸かない→お茶などの水分が取れない→脱水症・熱中症→入院」となりました。
入院まで行くのは、実際はポットだけの問題ではないものの、認知症の症状のある方は、少しの変化にも対応できない傾向が見られます。現場では「使い慣れているものを」が、合い言葉です。
※本稿は、『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』(著:藤原るか・坂本孝輔/すばる舎)の一部を再編集したものです。
『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』(著:藤原るか・坂本孝輔/すばる舎)
家族が認知症だとわかり、いざ介護が始まったとき。悩まされるのが、認知症の人の「かたくなさ」。「もっと素直になってくれたら、ずっと介護がラクになるのに」
──けれども、当人には当人なりの理由や道理がある。それを理解し受けとめると、驚くほどすーっと穏やかになってくれる。
訪問介護ヘルパー、デイサービスの経営者、「認知症対応の手練れ」である2人がタッグを組む本書。どう接すれば、認知症の人の気持ちを逆なでせず、日々穏やかに過ごしてもらえるか。現場に根ざしたノウハウを提供する。すぐに使えて、介護がラクになる!現役のデイサービス介護士による「認知症介護あるある」マンガも掲載。