(マンガ・イラスト:介護士タカハシさん)
厚生労働省によると、認知症の患者は2025年に約700万人まで達するとされています。一方で、家族による介護が始まったとき、悩まされがちなのが認知症の人の「かたくなさ」です。頑固さや怒りが収まれば、ずっと介護がラクになるのに、と介護者が思うこともしばしば。しかし「かたくなになる理由や道理を理解して受けとめられれば、驚くほど落ち着いてくれる」と、訪問介護ヘルパー・藤原さんはいいます。認知症の人の気持ちを逆なでせず、日々穏やかに過ごしてもらえるその接し方とは?

毎日来る新聞が休刊日に届かずパニック

ご訪問したある日の朝、92歳の松さんは下着姿で玄関にへたり込んでらっしゃいました。びっくりしてお聞きすると、「今朝は新聞が届いていない……」とおっしゃいます。

松さんにとっての新聞は、今日が何月何日何曜日かを確認する、大切なもの。

月に一度、新聞には休刊日があります。しかし、認知症をお持ちの松さんは、そのことを覚えていられません。「どうしたんだ! 自分の1日が始まらない!」という、重大な事態になってしまったのです。

 

また、松さんには他に、いつも欠かさず行っている生活のルーティーンがあります。たとえば毎朝、「亡き奥様の仏壇にお茶を供える」ことです。

あるとき、前日に訪問したヘルパーがうっかり電気ポットに水を入れ忘れてしまい、朝にポットが空でお茶がいれられませんでした。そのときの「仏壇のお茶がいれられない!」と、今にも泣き出しそうな松さんの顔を、私は忘れられません。