どうして手植えで実習をするのか?
聞けば、大学の農場の水田のほとんどは田植機を使っているが、学生たちの実習は、昔ながらの「手植え」をしているらしい。
もちろん先生たちは、田植えの機械があることを学生が知っている前提で、わざわざ「手植え」の実習をしている。
しかし、最近は、まわりに田んぼがない環境で育った学生がほとんどである。中には間近で田んぼを見たことがない学生もいる。田植機を知らない学生がいたとしても、無理のない話なのだ。
(それにしても、どうしてそもそも手植えで実習をするのだろう?)
現在は日本中のほとんどの田んぼで、苗は機械で植えられている。それなのに、「田植え体験」と言うと、ほとんどが手植えで苗を植える。
確かに、田植え体験には、子どもたちの自然体験というイベント的な性格がある。しかし、ここは大学の農学部である。
(研究を行い、先端技術を開発する大学の学生たちが、田植機を知らないというのは、おかしいのではないだろうか……)
小学校の田植え体験は、土に触れ、自然に触れるために、手で植える体験のほうがふさわしいだろう。
一方、農業技術を専門的に学ぶような学校では、田植機の操縦方法を教えている。それでは、大学の農学部はどうだろう?
農学部の学生の多くは農家になるわけではない。田植えをする体験も、これが一生に一度という学生も多い。
(大学の農学部の学生に、私は何を教えれば良いのだろう)
私にとってこれは、思ったより難問だった。