「でも、あきらめない。私はまた挑戦する」という手紙をもらっていたけれど……(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは東京都の60代の方からのお便り。夫婦でヨーロッパ旅行に行った時、ツアーで一緒だった女性と仲良くなり、旅行後も文通をしていたそうですが――。

ヨーロッパでの出会い

夫とヨーロッパ旅行に行った時、ツアーにいた一人参加の女性と仲良くなった。昭和一桁生まれで、「海外旅行は初めて」と言う。夫の納骨を済ませたあと、新聞の広告を見て参加を決めたそう。学生の頃から憧れていた外国へどうしても行きたくなり、年齢的に今を逃せば二度と行けないと思ったと話す。

子どもたちに相談すると、「添乗員さんがいる旅行だから安心だよ。行ってきたら」と背中を押してくれたそうだ。「もう一つ理由があって。夫は団体旅行が嫌いで、かと言って二人きりで海外なんて怖くて行けなかった」と話してくれた。

旅行中、彼女はツアーの女性たちと仲良くなり、アルプスの山を見てハイジの話で盛り上がったり、ドイツの城で息を切らしながらも最上階まで登ったり、常に楽しそうだった。

帰国してからは文通が始まった。オーストラリアで綺麗な花をたくさん見た話や、次はカナダにオーロラを見に行くという計画を綴ってくれる。年が明けると、「残念だけれどオーロラは見ることができなかった。でも、あきらめない。私はまた挑戦する」という手紙。私は彼女の好奇心に感心するばかりであった。

なぜかパッタリ手紙が来なくなって1年が過ぎ、心配になり手紙を出すと、娘さんから彼女は亡くなったとの知らせが届く。元気そうだったのにと、とても悲しかった。きっと彼女のことだから、風になって世界中を飛び回っていると思う。私も好奇心を失わず生きていきたい。


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