「あなたは運が良い」と言われた

母は老人ホームに入居したが、その後、病気になり、認知症でも受け入れてくれる病院に入院した。

2020年、母が入院している病院に面会に行くとき、駅の通路で、また復活したアリスのコンサートのポスターが目に入った。チケットは、駅のそばのビル内で販売していた。コンサートに行けなくなって約10年がたっていた。

母の病状は思わしくなく、チケットを買っても病状の悪化で行けない可能性があった。

しかし、どうしても演奏を聴きたいと思い、そのチケットコーナーに行った。販売員に「チケットはあとわずかです。あなたは運が良い」と言われた。

私が、「駅から外に出る通路で何となく左を向いて、コンサートのポスターを見たのです」と話すと、「今日、ポスターの位置を変えたのです。アリスがあなたを呼んでいるのですよ」と販売員に言われ、気持ちが明るくなった。

私は母の面会の帰りの夜に、アリスのコンサートに行くことができた。会場には50代以上の人たちのほかに、その人たちが連れてきた成人した子どもや孫が来ていた。演奏後に、若い人が感激した様子で、父親や祖父らしき人に、アリスについて質問しているのが微笑ましかった。アリスの名曲と演奏はこうして受け継がれていくのだと思った。

そのコンサートの半月後に母は病院で亡くなった。ポスターに気づき、アリスの演奏を聴けたことは、母からのプレゼントのような気がした。

谷村新司さんとアリスのコンサートで購入した ビデオ、CD、Tシャツ、本など。

感動と生き方を教えてくれた谷村さんには、「ありがとうございました」と過去形を使いたくない。私のこれまでの3大推し、横綱・玉の海、大関・貴ノ花、谷村新司さんは、私の中では永遠に生き続ける現在形なのだ。