声優としての職業病?

直感タイプの父に似たのか、私は何か言われた時にピーンとくることがあります。あるアフレコ現場でディレクターさんに「碧ちゃんの声は滑舌のいい人にありがちなんだけど子音が強い。母音を少し長くするともっと豊かなニュアンスが出せるよ」というアドバイスをいただいた時のことです。「声の音って母音と子音に分けることができるんだ?!」ということが分かり、そこから発声の工夫の幅が広がりました。

名付けて「母音子音論」。好きな声の人、真似たい声の人がいたら、その人のボイスサンプルなりで声を聴き込んで、その人がどんな母音で言葉を終わらせているのか、強調しているのかを真似ていくんです。口や言葉は「あ」だとしても「お」に近い音が出ていたりとか、人にはそれぞれ母音子音の使い方に特徴がある。

口の形だとか舌の使い方、お腹に力を入れたり抜いたり、リズムを工夫することで、声帯に頼りすぎずにいろんな変化した喋り方ができます。楽器であったとしたらフルートからはフルートの音しか出ないものですが、人間の場合はフルートからバイオリンの音を出すことができる。やり方次第で限りなく寄せていくことはできるんです。

「声優になりたい!」というお手紙を書いてくださった方に対して、直接関われなくとも何かお手伝いしたいと思った気持ちがこの本を書く動機の一つでした。いい声の方に出会うと、その方の声を真似られないかなというところに意識が行ってしまってお話しされている内容が入ってこない時があります(笑)。これは私の職業病かもしれません。