(イラスト:豊岡絵里子)
お腹周りは気になるけれど、食事はしっかり摂りたい、という人もいるでしょう。そこで注目したいのが、内臓脂肪を減らすという「胆汁酸(たんじゅうさん)」の力。その効果や増やし方について、専門家に聞きました(構成=島田ゆかり イラスト=豊岡絵里子)

まるで「せっけん」!?胆汁酸の驚くべき効果

現代人は、食べすぎが原因で病気になるという、なんとも贅沢な生き物になりました。しかし、それはここ100年くらいの話。人類の歴史のほとんどは飢餓との闘いで、かつては肥満の人間など一人もいなかったのです。

肥満でとくに深刻なのは、内臓脂肪。過剰に増えるとメタボリック症候群になり、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病を引き起こす原因に。放っておくと心筋梗塞や脳梗塞などといった命にかかわる病気になりかねません。ですから、この先の人生も健康でいるために、内臓脂肪をできるだけ減らしておくことが大切です。

そこでおすすめしたいのが、「胆汁酸ダイエット」。私は20年ほど前から「胆汁酸」の研究を行っていますが、近年はダイエットやアンチエイジングにも効果があることがわかり、世界中で注目が集まっています。まずは、「胆汁酸」について説明しましょう。

胆汁酸は、脂質の消化吸収を助ける働きをもつ胆汁の主成分で、コレステロールを原料に肝臓で作られる物質です。生成された胆汁酸はいったん胆嚢に蓄えられますが、食後、食べ物が胃から十二指腸(小腸の前半)へ送られると、胆嚢から分泌されます。

高齢者のなかには「胆石症で胆嚢を取ってしまいました」という方もいらっしゃいますが、胆嚢がなくても胆管が同じ役割を担うので心配いりません。

腸内で脂質と出合った胆汁酸は、脂質をカプセルのように包み込み、脂質が腸管壁に付着するのを防いでスムーズに流す役目をしています。いうなれば「腸管のせっけん」です。

台所を思い出してください。油がギトギトにへばりついた配水管は流れが悪くなりますが、せっけんを使うと流れやすくなります。胆汁酸はこのせっけんと同じ働きをしながら、ほかの栄養の吸収をサポートしているのです。

それだけではありません。小腸で消化の仕事を終えた胆汁酸は、腸の壁から再吸収されて血液中に流れ込み、血中濃度を上げます。そのことがスイッチとなり、食べ物から摂った栄養をエネルギーに変換しようと、体が熱を産生するのです。

食事をすると体温が上がるのは、胆汁酸がエネルギー代謝を促し、熱を作り出している証拠。さらに内臓脂肪の燃焼が促されます。

このほか、褐色脂肪細胞を活性化させる働きも。褐色脂肪細胞とは基礎代謝を高める細胞で、肩甲骨の付近にあり、活発に働くほど脂肪を燃焼させることがわかっています。つまり、胆汁酸の分泌が増えるほど、脂肪が燃えやすくなるというわけです。