独身、フリーランス。世間から「大丈夫?」と思われがちな40代の小林久乃さんが綴る「雑」で「脱力」系のゆるーいコラム。読んでいるうちに、心も気持ちも楽に軽くなる……。ただ「手抜き」のテクニックを勧めるだけではなく、年齢を重ねたことで得た「脱力」による省エネによって、次へのエネルギーを担保していこう! というのが、本企画の主旨。 第6回は「大人の誕生日は自由に、静かに」です。
今年の誕生日
「ハッピーバースデイ!!」
2023年10月25日。自分の誕生日に私は子ども連れ大歓迎のレストランにいた。友人とその子ども(まだこの世に生まれて4ヵ月ほど)が、ディナーでお祝いをしてくれていた。どうやら私と同じ誕生日の子どもが同じ店にいて、家族でお祝いをしていたらしい。
東京ディズニーランドで聞こえてきそうな、華やかかつ賑やかすぎるバースデーソングが、大音量で流れる、薄暗い店内。スタッフが花火の輝くプレートを持ちながら、店内を一周。主役の席にプレートがたどり着くと、店中から拍手が巻き起こり、バースデーサービスはクライマックスへ。主役の男の子は店中の注目がすべて自分に向けられている……という、高揚感で満足げな表情を見せていた。おめでとう、おめでとう。
ここで私ははたと気づく。まさか友人はあの大人には小っ恥ずかしいサービスを、私のために申し込んでいやしないだろうか。
「……ねえ、自分から聞くのはどうかと思うけど、私のためにあのバースデー余興、申し込んでいないよね?」
「いや、してない、してない。あれ、だいぶ派手だよね」
「子どもなら喜ぶと思うけど、もう五十路目前の私には苦行……」
「でもやったら面白いんじゃない?」
「やられたら誕生日の思い出が、あのサプライズ一色で染まって終わる」
「それも悲しいな」
友人の腕の中にいた赤ん坊が、私の気持ちを察するかのように、声を出して笑っていた。何歳からなのか、誕生日は静かに過ごしたいと思うようになった。誕生日は1年に1日しかない、その人だけのスペシャルデイ。当人が好きなように過ごすのが最適解であると伝えたい。