結城秀康。次男の彼が後継ぎに選ばれなかった理由とは――(写真提供:Photo AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかにして天下統一を成し遂げたのか、古沢良太さんの脚本で描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第47話は「乱世の亡霊」。茶々(北川景子さん)の妹・初(鈴木杏さん)と阿茶(松本若菜さん)が話し合い、和議が成立。しかし戦を望む者たちは大阪城に集まり続け――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「後継ぎ」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

いよいよバトンは次の世代へ

次回で最終回を迎える『どうする家康』。

ここまでさまざまな苦労を乗り越えてきた家康ですが、亡き妻・瀬名姫に誓った「天下人になり、戦のない世を作る」という夢をついに果たし、いよいよバトンを次の世代に渡す時がきたようです。

「後継ぎ」。現在でもとても重要なテーマです。「世襲」が強力な原理として機能していた時代に、権力や財産のある武家は、どうやって後継者を決定していたのでしょうか。

儒学では、人間の徳として「孝悌」を強調します。「孝」は「親孝行」。親に尽くすことですね。一方で、「悌」はなんともヘンテコな表現になりますが、「弟らしくすること」。弟が兄に対して礼を尽くすことなのですが、「親孝行」のような熟した言葉がないことでも分かるように、兄への謙譲は、日本社会では中国ほどは根付いていないようです。