『沿線格差』という言葉を目にすることが増えましたが、フリーライターの小林拓矢さんいわく、「それぞれの沿線に住む人のライフスタイルの違いは、私鉄各社の経営戦略とも深くかかわっている」のだとか。今回はその小林さんに「京王電鉄沿線の魅力と実情」を紹介していただきました。小林さんいわく「京王電鉄沿線は、知られざる実力派沿線」とのことですが――。
京王電鉄沿線の魅力と実情
知られざる実力派沿線、というべきなのが京王電鉄の沿線である。
東急沿線のようにハイソサエティなイメージはなくても、十分に高級感のあふれる沿線であり、沿線の不動産価格も高い。
両隣のJR東日本中央線や小田急電鉄ほどではないにせよ、豊かさが感じられる沿線となっている。
小田急電鉄が小田原を一気にめざして開業し、中央線の前身である甲武(こうぶ)鉄道が多摩エリア(とその先にある山梨県と長野県)を一気に結びつけようとして開業したのに対し、京王電鉄京王線系統は路面電車の延長として開業した。
軌間は1372ミリメートルであり、都心の路面電車と同じであった。
そのため、現在の新宿三丁目周辺から調布、そして府中へと開業した際には、駅が多く設定されていた。しかも根拠法は軌道法だった。
京王の狙いは、甲州街道付近に暮らす人に、路面電車のような便利な交通機関を提供しようというものだった。並走している中央線と比べ、駅の数が多く、駅間距離が短く、そもそも直線ではないということが特徴で、こまめに地域の乗客を乗せて便利に利用してもらおうとしたのだ。
府中より先は、京王の関連会社が地方鉄道法に基づいて軌間1067ミリメートルの線路を敷設(ふせつ)した。
実際に府中を過ぎると、京王電鉄の風景はがらりと変わるのである。その後、この会社は京王と合併した。そのうえで軌間を京王と統一した。