観光庁の発表によると、2023年の訪日外国人旅行者数は約2507万人で、過去20年間で4番目に多かったそう。インバウンド需要が回復しつつあるなか「日本人は、多くの日本の美点を見過ごしている」と語るのは、SNSで絶大な人気を集めるティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使。ジョージア生まれ、日本育ちの大使が興味深いと感じた、日本人にとって「当たり前」の文化とは? 自著『日本再発見』より、その「日本らしさ」を一部ご紹介します。
仕事をしていない人が冷たい目で見られる日本
「新卒一括採用」は、日本以外では韓国くらいしか存在しないと言われています。
日本では高校を卒業したら大学に入学するのが当たり前、大学を卒業したらすぐに就職するのが当たり前です。
そして多くの企業がもっとも採用活動の中で重点を置くのは新卒採用であり、新卒採用以外で職歴がない人間がどこかの会社に雇われるのは相当に困難になります。
大学院に行くわけでも弁護士や公認会計士のような難関国家資格を目指しているわけでもないのに新卒で就職できない、しない人間はまるで「負け組」、問題のある人間であるかのように扱われる風潮が、日本には存在しています。
これは世界的に見ると非常に特殊です。
もちろん、日本の新卒一括採用にも、良い面もあるでしょう。日本では若年労働者の失業率は5%以下で、世界平均の10%よりずっと良い数値です。それはこの新卒一括採用のしくみがあるからだと思います。
ジョージアではそもそも全体の失業率が10〜20%前後であり、日本よりも若者の失業率は断然高いです。
でも私が問題だと思うのは、日本では仕事をしていない人がものすごく冷たい目で見られることです。
都市部ならともかく、地方で平日の昼間に大人がブラブラ歩いていると「あの人、やばくない?」と不審者を見るような目を向けられますし、「あそこの家の息子さん、大学出たけど就職してないんだって」といった噂話は、心配から発せられるものではなく、ほとんど悪口と言っていいでしょう。
「働いていない状態はよくないもの」という強固な認識があるのです。