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厚生労働省が公開している「患者調査」によると、精神疾患を持つ外来患者数は増加傾向にあるそう。そのようななか、「悩みが増えた時こそ、ネガティブな思考を生み出す原因を探ることが重要」と語るのは、難病・パーキンソン病と闘う韓国の精神分析医キム・ヘナム先生。今回は、キム先生のベストセラー『「大人」を解放する30歳からの心理学』から「子どもの頃の話を避ける人の共通点」を紹介します。

子どもの頃の話を避ける人の共通点

1917年のハリファックス大爆発から2001年のアメリカ同時多発テロ事件に至るまで、歴史的惨事からの生還者1万5000人を追った「タイム」誌首席記者アマンダ・リプリーの著書『生き残る判断生き残れない行動』(岡真知子訳、筑摩書房)では、惨事に巻きこまれた人たちが一般的な予想とは異なる行動を見せることを記している。

人は津波やテロに遭遇した時、できるかぎり迅速にその場から離れるというのが一般的な予想だ。しかし実際の生還者たちは、危険を感知してからしばらくあとで避難していた。

すぐに事態は好転する、まさかそんな惨事が自分の身に降りかかるはずはないと考えていたからだ。

彼らは、自分だけは大丈夫と信じて危機的状況を否定したのである。

私たちが使う最も未熟な「防衛機制」の1つが「否認」だ。

文字どおり自分の身に起きた災難を認めずに、まるでそんなことはなかったかのように否定するのである。

例えば癌宣告を受けた患者が、そんなはずはない、間違いなく誤診だと考えて通院を拒んだり、いくつもの病院にセカンドオピニオンを求めたりする行為がそれに当たる。

不幸な現実を拒絶することで、ほんの一瞬でも心の平安を維持しようというわけだ。

人は不幸を認めたがらないものだ。不幸を認めてしまったら、惨めで覇気がなく無様な人間に成り下がってしまいそうな気がして、あるいはそのあとに訪れる怒りや絶望感に耐えられなくなりそうな気がして、はなからその事実を否定するのである。

それで不幸が消えるなら、どんなにいいだろう。しかし不幸は決して消えない。

しかも、その代償となる苦痛は絶大だ。