〈発売中の『婦人公論』10月号から記事を先出し!〉
ロックミュージシャンとしてシャウトする姿が印象深い世良公則さんは、作陶の魅力を知り、陶芸家としての活動を始めました。「和」文化への想いを熱く語ります(構成=村瀬素子 撮影=ANDU)
ロックミュージシャンとしてシャウトする姿が印象深い世良公則さんは、作陶の魅力を知り、陶芸家としての活動を始めました。「和」文化への想いを熱く語ります(構成=村瀬素子 撮影=ANDU)
土と「性が合う」と褒められて
僕が陶芸に出会ったのは、50代半ばのこと。NHKの『趣味悠々』という番組で、やきものの里・岐阜県多治見市を訪れたのがきっかけです。番組のなかで、陶芸家の七代加藤幸兵衛(こうべえ)先生に手ほどきを受けたとき、土をこねる僕の手を見て、先生がおっしゃったのです。
「世良さんの手は、土と性(しょう)が合う」
その言葉に導かれ、やきもの作りにのめり込んでいきました。
作陶は、土を練って空気を押し出す「菊練り」という作業から始まります。土のかたまりを見つめながら一心不乱に練っていると、雑念が消えて「無」になる。初めて味わった瞬間から、土の魅力にとりつかれました。菊練りを覚えるのに1年かかると言われますが、僕は1ヵ月ほどでできるようになったかな。
ただ、幸兵衛先生にご指導いただいたのはこの菊練りまで。そこから先は、先生の作り方を見よう見まねで体得していくのです。作るだけでなく、僕は全国の窯や個展に足を運び、本や動画で調べて、自分なりのやり方を模索しました。
頻繁に窯元には行けないので、土や道具も自分で取り寄せ、当初は東京の事務所のベランダに作陶場を設置。夏は汗をダラダラ流し、冬はダウンジャケットを着て土と格闘していました。