「次はこれをやろう、あれをやろう、と忙しくて、〈寂しい〉と感じているヒマもありません」(撮影:鍋島徳恭)
50年以上ひとり暮らしを続ける、おひとり様のベテラン・池畑慎之介さんは、自宅の居心地のよさをなにより大事にしているそうです。賃貸物件を転々としていた時期もありましたが、今は老後を見据え、工夫を凝らした一軒家を建て、自由なひとり暮らしを楽しんでいます(構成=内山靖子 撮影=鍋島徳恭)

前編よりつづく

キッチンが広くなりほしいものを揃えて

私はひとり暮らしのベテランですから(笑)、やりたいことが常に山積みです。10年ほど前から「やりたいことリスト」を書くノートを作り、自分が挑戦したいと思ったことはすべて書き留めるようにしています。

「豚汁を作りたい」「車の床に落ちているパンくずを掃除したい」などの小さなことから、「居間の壁紙を張り替えたい」「海辺の平屋に住みたい」といった大きなことまで。実行できた項目はどんどん消していくので達成感があります。

ただ、消したそばからまた新たな目標を思いつくので、ノートには常に30項目以上の「やりたいこと」が残されている。それだけあると、人は後ろ向きにならないんですよ。次はこれをやろう、あれをやろう、と忙しくて、「寂しい」と感じているヒマもありません。

近頃は、ひとり暮らしになって時間ができると断捨離や終活を始める方も多いですけど、やみくもにモノを減らすのはどうなんでしょう。

もちろん、今の自分にとって不要なモノを処分するのは賛成です。私も数年前に、父から相続した高輪のマンションを筆頭に、ハワイの別荘や福岡県の糸島にあったマンションをすべて手放しました。

50代までだったら、飛行機に飛び乗って、あちこちの家を渡り歩くのも楽しかったけれど、この年齢になったら、もう少し落ち着いた暮らしがしたいですからね。