(写真提供:Photo AC)
腸と脳が情報のやり取りをして、お互いの機能を調整している<脳腸相関>と呼ばれるメカニズムが、いま注目されています。東京大学大学院総合文化研究科の坪井貴司教授いわく、「腸内環境の乱れは、腸疾患だけでなく、記憶力の低下、不眠、うつ、肥満、高血圧、糖尿病……と、全身のあらゆる不調に関わることがわかってきている」とのこと。そこで今回は、坪井教授の著書『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』から、腸と脳の密接な関わりについて一部ご紹介します。

パーキンソン病とレビー小体型認知症

アルツハイマー型認知症に次いで多い神経疾患が、パーキンソン病です。

パーキンソン病では、大脳と脊髄との間をつなぐ脳幹に存在する中脳黒質(こくしつ)(皮膚を黒くするメラニン色素が含まれているため実際に黒く見えます)の神経細胞(ニューロン)の中に、レビー小体(しょうたい)と呼ばれる小さな構造物が出現します。

その後、黒質のニューロンが選択的に死んでしまい、時間をかけてニューロン数が減少することでパーキンソン病が発症します。

この黒質のニューロンは、運動や姿勢の調節、歩行の制御などに関与する脳の中心部に位置する線条体(せんじょうたい)と呼ばれる部位へ情報を伝達しているため、黒質のニューロンが死んでしまうと、振戦(しんせん)(ふるえ)が出たり動作が緩慢になる、姿勢を維持するのが難しくなって転びやすくなるといったパーキンソン病の症状が現れるのです。

研究が進み、α-シヌクレインと呼ばれるタンパク質が正しい立体構造をとれなくなり、異常型α-シヌクレインとなってレビー小体に蓄積していることがわかりました(1-1)。

この異常型α-シヌクレインは、黒質だけでなく大脳皮質のニューロンにも蓄積する場合もあり、その場合は、認知症や幻覚などの症状を伴います。そのため、パーキンソン病と区別して、レビー小体型認知症と呼ばれます。