市村正親さん
「お弁当には、必ず小さな付箋の手紙を添えています」(撮影:小林ばく)
舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第一回は「インコと息子とモーツァルト」です。(構成=大内弓子 撮影=小林ばく)

小さな手紙を添えて

最近の僕の1日は、朝6時半に起きて、セキセイインコに餌をやるところから始まります。僕の顔をちゃんと覚えていて、「ピーヤ!(餌くれ!)ピーヤ!」と催促してくる(笑)。

餌をもらって「チチチチチ」と喜ぶ声を聞いたら、次は犬のトイレ掃除をします。その後とりかかるのが、息子たちのお弁当作り。現在高校1年生の長男(俳優の市村優汰さん)が中学に入学したのを機に始めましたから、もう手慣れたものです。

おかずには赤・黄・緑の3色を必ず入れます。これには理由があって、僕が子どもの頃――相当な昔だけど(笑)、新聞紙にくるまれたアルミ製の弁当箱の蓋を開けると、だいたい茶色なんだよ。

居酒屋をやっていた母が作ってくれる弁当は、ごま油で卵を炒って醤油と砂糖をからめたのがご飯の上にどんと乗っているだけ。周りの子の弁当を見ると、カラフルなのが羨ましくてね。それで弁当の色味にはこだわるようになったの。

僕が作る弁当は割とシンプルだけど、僕が忙しい時にママ(元妻の篠原涼子さん)が来て作ってくれる弁当は、量もおかずの種類もけっこう多くて。人の個性が出るのが面白いね。

トマト、卵、ブロッコリーの3色を基本に、トマト嫌いの次男にはカニカマや赤カブを。卵はだし巻き玉子にするか、炒り卵。それに肉料理を一品。最近では、鶏ひき肉と豆腐とえのきのみじん切りを片栗粉と混ぜて焼くナゲット風がヒット作でした。

たまに自分の分も作って、「これくらい濃い味のほうが美味いな」「今日のはイマイチだったな」と、息子たちと確認し合うのが、忙しい日々におけるコミュニケーションです。