(写真提供:Photo AC)
2020年に心筋梗塞を患った解剖学者・養老孟司先生は、2024年5月に「小細胞肺がん」と診断されました。養老先生の教え子で、自らも膀胱がんを経験した東大病院放射線科医師・中川恵一先生や、娘の暁花さんとともにがんと闘っています。そこで今回は『養老先生、がんになる』から一部を抜粋し、2024年6月11日に行われた暁花さんへのインタビューをお届けします。

虫法要と虫展に出たい父

小細胞肺がんの治療は、まず抗がん剤(化学療法)で、がんを小さくして、それから放射線治療を行います。

抗がん剤は3日間の点滴を、3週間あけて、4回行います。その前後にいろんな検査もするので、1回の抗がん剤治療で1週間くらい入院します。最初の入院は、検査入院から1回目の抗がん剤まで続いたので、結構長引きました。

1回目の抗がん剤の後は、虫法要が控えています。毎年6月4日の「虫の日」に、鎌倉の建長寺で、父の発案による虫法要が行われているのですが、これは何としても出席しないといけないと本人は言います。

このときは、抗がん剤の後の副作用を確かめる検査が続いて、退院が延び延びになっていました。

抗がん剤の副作用のひとつに白血球の減少があります。白血球が少ないと、感染症にかかりやすいので、外出すると感染リスクがあります。

東大病院の医師たちが父に退院許可を出すには、この白血球の数値がどのくらいあるかを見極めなけなければなりません。

そんなこんなで、退院できたのは前日の6月3日でしたが、無事に虫法要はすませることができました。