家族もがんばっているんだよ

父は東大病院が嫌いだと、本にも書いています。でも私からすると、父を安心してまかせられる、よい病院です。

昔の東大病院は違っていたのでしょうけれど、父が東大病院をやめてから、30年近くたっています。ずいぶん変わったのではないでしょうか。

養老孟司
(写真:『養老先生、がんになる』より)

担当医の岩崎美香先生(「崎」は正しくは「たつさき」)をはじめ、呼吸器内科の鹿毛秀宣教授も、中川先生も、みなさんよい方ばかりです。

父はどう思っているかどうかわかりませんが、私は今回、医師に恵まれたと感謝しています。

父も入院する前は、「ここまで生きたんだから、もういい!」みたいなことを言っていました。

でも若いドクター陣の情熱にほだされたのか、「俺が元気になったら、彼らが喜ぶだろう」とか、珍しくそんなことを言っていました。

虫法要のときのスピーチでも、退院を許可してくれたドクターたちへの感謝の言葉を述べていました。

でも、がんばっているのは東大病院のドクターだけではありません。家族だって、父のためにがんばっているんです。虫法要には私も同席していますが、スピーチの最中、思わずそう叫びそうになってしまいました。

まあ、人前で家族への感謝とかは絶対に言わない人ですから、期待もしていませんでしたけどね。