2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。横浜流星さん演じる主人公・蔦屋重三郎は、江戸の出版プロデューサー。敏腕編集者でもあった蔦重が見抜いて手掛けた、浮世絵、出版、芝居、グルメ、ファッションは次々と江戸の流行となりました。そんな「江戸のメディア王」が躍動した時代の本当の楽しみ方を、『蔦屋重三郎と江戸の風俗』より一部を抜粋して紹介します。
「浮世絵」をモノクロからカラーへ発展させたマニアたち
蔦屋重三郎は、「本」でも多数のヒット作を作りましたが、それらは約250年という歴史に埋もれて、今、読む人は少なく、一般にはほとんど知られていません。
一方、蔦重の手がけた「浮世絵」は、時代を超え、国境を超えて、今では世界的に知られています。
写楽の大首絵などは、ジャパンアートの代表格といえるでしょう。ここからは、蔦重の手がけた絵を中心に、浮世絵の歴史を振り返っていきます。
まず、「浮世絵」とは、「浮世」を描いた風俗画の総称です。江戸時代には「浮世絵」に限らず、「浮世草子」「浮世風呂」など、「浮世」のつく言葉がよく使われていました。
この「浮世」、戦国時代までは「憂世」と書かれ、「この世は憂うべき世」という意味で使われていました。
ところが、江戸時代、天下太平の時代を迎えると、「憂世」は「浮世」と表記されはじめます。
そこには、平和な世の中、楽しく浮かれて暮らそうではないか、そんな意味が込められていたようです。